臨床神経学

症例報告

腎機能障害患者がスギヒラタケ摂食後に発症した急性脳症―新潟県・県北地域における発端症例の検討―

桑原 武夫1), 新井 亜希1), 本間 則行2), 西澤 正豊3)

1)新潟県立新発田病院 神経内科〔〒957-8588 新発田市大手町4-5-48〕
2)同 腎臓内科
3)新潟大学脳研究所神経内科

2004年9月下旬から10月初旬にかけて,新潟県北部で腎機能障害患者がスギヒラタケ摂取後に発症した急性脳症の自験例6例について臨床経過と検査所見を検討した.いずれも手足の振戦やミオクローヌスとおもわれる不随意運動と不肢の脱力で発症した.軽度の意識障害を呈し,その後4例が短期間で痙攣重積状態になった.2例が死亡した.髄液検査は細胞増加をともなわない蛋白の経度上昇をみとめた.痙攣を起した症例の脳波は高振幅の徐波と鋭波が頻発していた.CT/MRIでは両側の被殻外側から前障・外包にかけての低吸収域と前頭葉,側頭葉,頭頂葉底面の白質に浮腫様変化をみとめた.髄液の病原体検索は陰性であった.摂食調査では全例で食用きのこの一種であるスギヒラタケを摂取していたことが判明したが,これまでの中毒事例の報告はなく,原因・病態の解明が急務である.

(臨床神経, 45:239−245, 2005)
key words:急性脳症, スギヒラタケ, 腎機能障害, 腎透析

(受付日:2005年1月26日)