臨床神経学

症例報告

前脈絡叢動脈領域梗塞で復唱が保持されていた失語の1例

仙石 錬平, 小野内 健司, 佐藤 浩則, 井上 聖啓

東京慈恵会医科大学 神経内科〔〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8〕

症例は55歳,右ききの男性である.心原性脳塞栓による意識障害,右片麻痺で発症した.意識障害の回復とともに黄斑回避をともなわない右同名半盲,失語が判明し頭部MRIでは左前脈絡叢動脈領域に一致した梗塞巣をみとめた.失語は非流暢で聴覚理解が悪く,それに比して復唱が保たれており,経過中,混合型超皮質性失語症に分類可能な失語症状を呈した時期もみとめられた.前脈絡叢動脈領域梗塞にともなう失語の報告例は過去に散見されるが,詳細な記載をしているものは少ない.今回,過去の報告例との比較により前脈絡叢動脈領域の障害で生じる失語では,復唱が良好にもかかわらず物品呼称や聴覚理解が不良であることが特徴であると考え報告した.

(臨床神経, 45:735−739, 2005)
key words:前脈絡叢動脈, 脳梗塞, 混合性超皮質性失語, 復唱, SPECT

(受付日:2004年12月20日)