症例報告
大量出血による急激な貧血を契機に発症した両側境界領域脳梗塞の2例
植田 明彦1）, 橋本 洋一郎1）, 釘宮 史仁2）, 米村 公伸2）, 平野 照之3）, 内野 誠3）
1）熊本市立熊本市民病院神経内科〔〒862-8505 熊本市湖東1丁目1-60〕
2）同 脳卒中診療科
3）熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野
症例1は46歳女性である．子宮腺筋症による過多月経後に左手の麻痺および両眼の視力障害が出現した．来院時ヘモグロビン6.7 g/dl，MRAで異常なく，MRI拡散強調画像で両側大脳半球および小脳の境界領域に多発性梗塞をみとめ，両側の視力障害も同時に呈するoptico-cerebral syndromeの可能性が考えられた．症例2は67歳男性である．胃潰瘍による大量出血後に意識障害，右片麻痺が出現した．来院時ヘモグロビン8.0 g/dl，MRAでは左内頸動脈閉塞であったがMRI拡散強調画像で両側大脳半球の境界領域に多発性梗塞をみとめた．2例とも大量出血後に脳梗塞を発症しており，両側境界領域の多発性梗塞は大量出血後に発症する脳梗塞の特徴と考えられた．
(臨床神経, 45：724−729, 2005)
key words：両側境界領域脳梗塞, 大量出血, 血行力学的, optico-cerebral syndrome, 拡散強調画像
（受付日：2004年11月22日）
