臨床神経学

原著

頸部頸動脈内可動性血栓の臨床像

稲富 雄一郎1), 森 麗1)2), 米原 敏郎1), 橋本 洋一郎3), 平野 照之2), 内野 誠2)

1)済生会熊本病院脳卒中センター〔〒861-4193 熊本市近見5-3-1〕
2)熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野
3)熊本市立熊本市民病院神経内科

頸部頸動脈内可動性血栓の臨床像について検討した.対象は急性期虚血性脳血管障害1,525例中,頸部血管エコーで可動性血栓を確認した14例(0.9%;平均77歳;女性8例)であり,入院時重症度,退院時転帰ともに不良であった.MRAでは11例で内頸動脈閉塞をみとめた.可動性血栓は浮遊性血栓5例,可動性壁在血栓5例,管腔内充満性血栓4例に分類された.頸部血管エコーを再検した7例中4例では同側内頸動脈閉塞をみとめた.浮遊性血栓の1例では臨床上再発なく消失していた.全例外科治療は施行せず,抗血栓療法または対症療法のみとしたが,入院中の急性期再発は可動性血栓の対側に生じた1例のみであった.

(臨床神経, 45:711−716, 2005)
key words:可動性血栓, 脳梗塞, 頸部血管エコー, 頸動脈

(受付日:2004年12月18日)