臨床神経学

短報

ヘパリン起因性血小板減少症により悪化した脳血栓症の1例

谷口 洋1), 三村 秀毅2), 小澤 律子2)*), 佐藤 浩則1), 井上 聖啓2)

1)東京慈恵会医科大学附属柏病院 神経内科〔〒277-8567 千葉県柏市柏下163番地-1〕
2)東京慈恵会医科大学附属病院 神経内科
*)現 国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部

症例は75歳男性である.脳血栓症のヘパリン治療中に再梗塞,血小板減少,および播種性血管内凝固症候群(DIC)を呈した.ヘパリン投与中止により,血小板数は正常化し,DICも改善した.臨床経過と抗血小板第4因子・ヘパリン複合体抗体陽性から,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)による病態と診断した.脳梗塞をヘパリンで治療中に症状が増悪したときは,原因としてHITを鑑別する必要がある.血小板減少をみとめたらヘパリンの中止を考慮すべきである.

(臨床神経, 44:636−638, 2004)
key words:脳血栓症, 血小板減少, 播種性血管内凝固症候群, ヘパリン起因性血小板減少症, 抗血小板第4因子ヘパリン複合体抗体

(受付日:2003年12月10日)