臨床神経学

症例報告

Creutzfelt-Jakob病類似の症状を呈し髄液14-3-3蛋白陽性であったステロイド反応性脳症の1例

宇津宮 香苗1), 荒川 竜樹1), 藤本 伸1)2), 上山 秀嗣1), 熊本 俊秀1)

1)大分大学医学部脳・神経機能統御講座(内科第三)〔〒879-5593 大分県大分郡挾間町医大ヶ丘1-1〕
2)現 上尾記念病院神経内科〔〒870-0106 大分県大分市東鶴崎2-3-30〕

症例は69歳男性である.亜急性に痴呆,傾眠傾向,歩行障害が出現し,入院時,はためき様眼球動揺,上肢のミオクローヌスをみとめた.髄液中の蛋白上昇,14-3-3蛋白陽性,脳波では高振幅徐波,頭部MRI FLAIR法および拡散強調画像で深部白質や左視床に高信号域をみとめた.Creutzfelt-Jakob病がうたがわれたが,症状の進行や脳波上周期性同期性放電はみられなかった.自己免疫性脳症も考えられたためステロイド治療をおこなったところ,症状の改善をみとめ,はためき様眼球動揺やミオクローヌスは消失し,髄液蛋白は正常化し,脳波所見も改善傾向を示した.本症例はステロイド療法が有効であり,自己免疫機序の関与が考えられた.

(臨床神経, 44:618−622, 2004)
key words:ステロイド反応性脳症, 14-3-3蛋白, Creutzfelt-Jakob病, はためき様眼球動揺

(受付日:2004年2月14日)