臨床神経学

症例報告

大動脈内バルーンパンピング後にコレステロール塞栓による脊髄梗塞を合併した1例

仙石 錬平3), 星野 晴彦1), 高木 誠1), 折笠 英紀2), 山崎 一人2)

1)東京都済生会中央病院 神経内科〔〒108-0073 東京都港区三田1-4-17〕
2)同 病理科
3)現 東京慈恵会医科大学医学部神経内科〔〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8〕

症例は,基礎疾患に糖尿病,高血圧,高脂血症のある62歳男性である.入院時に左室不全をおこし,大動脈内バルーンパンピング(IABP)を施行した.IABP抜去後3日目(入院後第7病日(以下,第7病日))より突然両下肢の麻痺が出現し,脊髄MRIで第11胸椎から第1腰椎レベルの脊髄がT2強調画像で高信号をみとめた.第19病日に心原性ショックで永眠し,剖検でコレステロール塞栓による広範な脊髄梗塞を確認した.塞栓にはコレステロール栓子のみからなる塞栓と,器質化した塞栓の2種類が存在した.高度な動脈硬化が存在する動脈に侵襲的な治療を施行する際は,コレステロール塞栓による脊髄梗塞をひきおこす可能性があり注意を要する.

(臨床神経, 44:604−608, 2004)
key words:大動脈内バルーンパンピング, 脊髄梗塞, コレステロール塞栓, 動脈硬化症

(受付日:2003年12月11日)