臨床神経学

症例報告

後天性免疫不全症候群にともなう進行性多巣性白質脳症病巣の拡散強調画像を主としたMRIによる神経放射線学的検討

内堀 歩1), 小林 康弘1), 千葉 厚郎1), 土屋 一洋2), 鄭 懐穎3), 余郷 嘉明3), 作田 学1)

1)杏林大学神経内科〔〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2〕
2)杏林大学放射線科〔〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2〕
3)東京大学泌尿器科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕

症例は左半身の筋力低下と感覚障害が亜急性に進行した27歳男性である.血液検査でHIV感染をみとめ,頭部MRIで右頭頂後頭葉と右外包にT1強調像で増強効果を示さない低信号,T2強調像で高信号のmass effectをともなわない白質に限局した病変をみとめた.髄液中JCウィルスDNAが証明され進行性多巣性白質脳症と診断した.頭頂後頭葉病変は拡散テンソル画像で拡散異方性の低下を,1H-MRSでNAAの減少,ChoとMIの増加をみとめた.拡散強調画像を主としたMRIによる神経放射線学的検討から,病巣は病態の進行にともなって拡散能のことなる3つの部分,すなわち辺縁から中心に向かって細胞障害性浮腫―血管原性浮腫―嚢胞と変化する構造を持つと推察した.

(臨床神経, 44:531−536, 2004)
key words:PML, AIDS, 拡散強調画像, ADC, 拡散テンソル画像

(受付日:2003年11月19日)