臨床神経学

症例報告

抗菌剤のみによって寛解した後頭蓋窩肥厚性硬膜炎の1例

佐藤 由加子, 青山 雅彦, 添田 智子, 星 明彦, 本間 真理, 山本 悌司

福島県立医科大学神経内科〔〒960-1295 福島県福島市光が丘1〕

症例は65歳女性である.頭痛,発熱が出現し,滲出性中耳炎として治療されていたが,下位脳神経麻痺,項部硬直と,炎症所見陽性であり,髄膜炎をうたがわれ当院を受診した.右感音性難聴,右反回神経麻痺,左胸鎖乳突筋萎縮,両側舌縁萎縮をみとめた.髄液検査では細胞数35/mm3,蛋白85 mg/dl,細胞診はclass I,各種培養は陰性であった.各種腫瘍マーカーと自己抗体は陰性であった.内耳CTにて両側乳様突起炎をみとめ,右錐体骨に骨破壊像を同定した.頭部MRIでは後頭蓋底部の硬膜は肥厚し,Gd増強効果をみとめた.錐体骨の感染病巣が原因の肥厚性硬膜炎と考え,抗生物質のみを投与した.しだいに脳神経症状は改善し,中耳炎の波及による細菌性肥厚性硬膜炎であると結論した.

(臨床神経, 44:527−530, 2004)
key words:肥厚性硬膜炎, 慢性中耳炎, 乳突蜂巣炎

(受付日:2003年11月14日)