臨床神経学

原著

抗GalNAc-GD1a抗体陽性自己免疫性ニューロパチー患者の臨床像

辰元 宗人, 小鷹 昌明, 古賀 道明, 平田 幸一, 結城 伸泰

獨協医科大学神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕

抗GalNAc-GD1a抗体陽性患者の臨床像をしらべ,どのような疾患で測定意義があるのかを検討した.抗ガングリオシド抗体測定を依頼された各種神経疾患1,713例中,64例でIgG抗GalNAc-GD1a抗体が陽性であった.うち57例がGuillain-Barré症候群(GBS)で,男性に多く,下痢の前駆症状を有し,脳神経麻痺と感覚障害をともなわず遠位筋優位の筋力低下を呈する例が多かった.さらに,軸索型GBSと相関が高いIgG抗GM1,抗GM1b,抗GD1a抗体をともなう例が多かった.IgMクラスのみ抗GalNAc-GD1a抗体が検出された症例が16例あったが,その多くがGBSやFisher症候群であった.16例中3例で,サイトメガロウイルスと関連する報告があるIgM抗GM2抗体がみられた.本抗体は,GBSを支持する補助検査として有用と考えられた.また,共存する他の抗ガングリオシド抗体や神経徴候に多様性があることも明らかにされた.

(臨床神経, 44:508−512, 2004)
key words:抗GalNAc-GD1a抗体, 抗ガングリオシド抗体, Guillain-Barré症候群, Campylobacter jejuni

(受付日:2004年1月13日)