臨床神経学

短報

心筋障害をきたした肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)2Bの1例

久留 聡1), 安間 文彦2), 若山 忠士1)6), 木村 正剛1)6), 小長谷 正明1), 青木 正志3), 田辺 正樹4), 高橋 俊明5)

1)国立病院機構鈴鹿病院神経内科〔〒513-8501 三重県鈴鹿市加佐登三丁目2-1〕
2)国立病院機構鈴鹿病院内科〔〒513-8501 三重県鈴鹿市加佐登三丁目2-1〕
3)東北大学神経内科〔〒980-8574 宮城県仙台市青葉区星陵町1-1〕
4)三重大学第一内科〔〒514-8507 三重県津市江戸橋2丁目174番地〕
5)国立病院機構西多賀病院神経内科〔〒982-8555 宮城県仙台市太白区鈎取本町2-11-11〕
6)名古屋大学神経内科〔〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65〕

57歳女性例を報告した.34歳時に歩行障害で発症し,下肢および上肢近位筋の筋萎縮・筋力低下が緩徐に進行した.血清CKは高値を示した.生検筋の免疫組織化学的検討では,筋形質膜にジスフェルリンをみとめなかった.ジスフェルリン遺伝子exon28のG3370T変異をみとめ肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)2Bと診断した.心エコーでは心腔の拡大と,び漫性の壁運動の低下がみられた.左室駆出率は32%と低値であり,拡張型心筋症の所見であった.本例の心筋障害は筋ジストロフィーに関連するものと考えられた.LGMD2Bの臨床では心筋障害をきたしうることを考慮して経過を観察すべきであると考える.

(臨床神経, 44:375−378, 2004)
key words:肢帯型筋ジストロフィー2B型, 心筋障害, ジスフェルリン, 免疫組織化学, 遺伝子変異

(受付日:2003年9月18日)