臨床神経学

症例報告

頭蓋内に肉芽腫形成をともなった再発性多発軟骨炎の1例

伊藤 真典, 三浦 裕之, 島村 秀樹, 久保寺 隆行, 松岡 健

東京医科大学霞ヶ浦病院第5内科〔〒300-0395 茨城県稲敷郡阿見町中央3-20-1〕

症例は67歳の男性である.脳動脈瘤破裂と副鼻腔炎の既往あり.左耳介軟骨炎と上強膜炎がみとめられ,耳介の生検にて再発性多発軟骨炎(RP)と診断されたが,経過中,急性心筋梗塞および見当識障害を発症した.血液検査上,炎症性マーカーが高値を呈した.頭部CT,MRIで,腫瘤の一部は両側前頭葉間の大脳鎌に接し小円形を呈し,他方は前頭蓋底に沿って不均一に観察され,また周囲には広汎な浮腫がみとめられた.腫瘤摘出にて見当識障害を中心とした臨床症状や画像上の浮腫は著明に改善した.腫瘤は組織学的に炎症性肉芽腫と診断されたが,手術所見上,肉芽腫は副鼻腔と独立して生じていた.頭蓋内に肉芽腫がみとめられたRPの報告は少なく,考察を加えて報告した.

(臨床神経, 44:350−354, 2004)
key words:再発性多発軟骨炎, 頭蓋内肉芽腫, Wegener肉芽腫症, 治療可能な痴呆

(受付日:2003年9月3日)