臨床神経学

短報

Borrelia afzelii感染にともなう好酸球性筋膜炎の1例

菊地 統1), 村井 弘之1), 池添 浩二1), 川尻 真和1), 大八木 保政1), 磯貝 恵美子2), 吉良 潤一1)

1)九州大学大学院医学研究院附属脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
2)北海道医療大学歯学部口腔衛生学教室

症例は58歳女性である.2001年11月に登山した後,12月から四肢のこわばり,腫脹,発赤,筋肉痛で発症し,四肢はしだいに屈曲拘縮をきたした.神経学的には,近位筋優位に対称性の軽度の筋力低下と,皮下硬化にともなう関節可動域制限をみとめた.末梢血中に好酸球増多と高ガンマグロブリン血症をみとめ,血清抗ボレリア抗体が陽性でBorrelia afzeliiに強い抗体応答を示した.上腕MRIでは上腕二頭筋筋膜に造影効果をみとめ,右上腕における皮膚・筋膜・上腕二頭筋生検では筋膜内の血管周囲炎症細胞浸潤と,筋膜の肥厚をみとめた.臨床的および血清学的にボレリア感染による好酸球性筋膜炎と診断し,プレドニゾロンに加えて塩酸ドキシサイクリン,アモキシシリンを投与し,症状は改善した.本症例はBorrelia afzeliiが筋膜炎の原因となりうることを示したはじめての報告である.

(臨床神経, 44:299−302, 2004)
key words:好酸球性筋膜炎, ボレリア, Borrelia afzelii

(受付日:2003年8月11日)