臨床神経学

短報

血液浄化療法中に“たこつぼ型心筋症”を発症した筋無力症クリーゼ

荒井 元美1), 浮海 洋史2), 宮田 晴夫2)

1)聖隷三方原病院神経内科〔〒433-8558 静岡県浜松市三方原町3453〕
2)同 循環器科

83歳の女性が眼瞼下垂次いで嚥下障害を自覚し,その約2カ月後に筋無力症クリーゼをおこした.人工呼吸器を装着し,免疫吸着療法を施行中に血圧が低下した.心電図で多くの誘導に陰性T波とST上昇がみられ,心エコー検査で心尖部を中心に広範な左室の収縮低下をみとめたことから,たこつぼ型心筋症と診断した.ドパミンの持続静注で血圧を維持し,1週間以内に左室機能は正常化した.たこつぼ型心筋症は高齢の女性に好発する.また,高齢の重症筋無力症患者が増加し,その中では全身重症型の割合が高い.高齢者のクリーゼでは呼吸困難などの症状とそれに対する不安,および治療行為がたこつぼ型心筋症の誘因となりうるので,心電図を注意深くモニターする必要がある.

(臨床神経, 44:207−210, 2004)
key words:重症筋無力症, クリーゼ, 球麻痺, 血液浄化療法, たこつぼ型心筋症

(受付日:2003年9月11日)