臨床神経学

短報

脳幹小脳梗塞を生じた頭蓋底陥入症の1例

笠井 高士, 吉川 健治, 立花 俊治, 谷口 琢也, 中川 正法

京都府立医科大学神経内科学教室〔〒602-8566 京都市上京区河原町広小路上る梶井町465〕

症例は30歳の男性である.午睡から目覚めたときに複視を自覚して当院を受診した.神経学的所見として右MLF症候群と四肢腱反射の亢進をみとめ,一般所見として短頸と下顎低形成をともなっていた.頭部MRIにて右橋被蓋と右小脳半球に梗塞巣をみとめた.また頸椎レントゲンおよび頸部MRI所見より頭蓋底陥入症(basilar impression以下BI)の合併を確認した.三次元CT血管撮影を施行したところ,陥入した歯状突起による椎骨動脈の後外側への偏位がみとめられた.本例の脳梗塞発症機序として,椎骨動脈に対する機械的圧迫が重要であると考えられた.

(臨床神経, 44:203−206, 2004)
key words:頭蓋底陥入症, 脳幹小脳梗塞

(受付日:2003年8月29日)