臨床神経学

症例報告

蛇行した椎骨動脈の延髄圧迫により一側下肢の温痛覚低下を呈した1例

岩崎 靖1)2), 中村 友彦1)2), 浜田 健介1)2)

1)名城病院 神経内科〔〒460-0001 名古屋市中区三の丸1-3-1〕
2)名古屋大学医学部 神経内科〔〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65〕

症例は54歳男性であり,主訴は左下肢の温痛覚低下である.2001年12月左下肢の温覚低下を自覚して,名城病院神経内科を初診した.神経学的には左下肢の温痛覚のみが低下し,脳神経,四肢筋力,腱反射,他の感覚系に異常はみられなかった.頭部MRIにて,蛇行した正常径の右椎骨動脈による右延髄腹外側部の圧迫がみられ,右外側脊髄視床路の外側部が障害されていると推定された.蛇行した椎骨動脈の圧迫により中枢神経症状を呈した症例の報告は過去に散見される.しかし温痛覚低下のみを呈したと考えられる症例の報告はなく,またその障害が一側下肢のみに限局したことは神経解剖学的に興味ある所見と思われた.

(臨床神経, 44:176−181, 2004)
key words:椎骨動脈, 延髄, 外側脊髄視床路, 温痛覚障害, MRI

(受付日:2003年7月14日)