臨床神経学

症例報告

高齢発症で慢性進行性の経過を辿り,顔面,躯幹の感覚障害をともなった遺伝性圧脆弱性ニューロパチーの1例

薬師寺 祐介1), 黒原 和博1), 吉村 俊朗2), 山本 正彦3), 黒田 康夫1)

1)佐賀大学内科〔〒849-8501 佐賀県佐賀市鍋島5丁目1-1〕
2)長崎大学医学部保健学科〔〒852-8520 長崎市坂本1丁目7-1〕
3)名古屋大学神経内科〔〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65〕

症例は69歳の男性である.55歳より四肢遠位の筋力低下と異常感覚が緩徐に進行した.入院時には右顔面と右第4〜10胸髄レベルの感覚障害を合併していた.腓腹神経生検でtomaculaをみとめ,サザンブロット法とfluorescence in situ hybridization法の両者でperipheral myelin protein-22遺伝子領域の欠失が確認され,遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)と診断した.遺伝子検索がなされたHNPP症例において顔面,躯幹の感覚障害を合併はまれで,本例はHNPPの臨床的多様性を示した.

(臨床神経, 44:160−164, 2004)
key words:遺伝性圧脆弱性ニューロパチー, 高齢発症, 慢性緩徐進行性, 三叉神経, 胸神経

(受付日:2003年4月13日)