臨床神経学

短報

眼球挫傷をともなう頭部外傷後に大脳白質散在性病変が出現した1例

中村 智実1), 太田 宏平1)2), 丹羽 直樹3), 竹内 恵1), 内山 真一郎1), 岩田 誠1)

1)東京女子医科大学脳神経センター神経内科〔〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1〕
2)東京理科大学理学部〔〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3〕
3)沼津市立病院神経内科(現 長池脳神経クリニック)〔〒410-0302 静岡県沼津市東椎路字春の木550〕

眼球挫傷をともなう頭部外傷後に大脳白質散在性病変が出現した36歳男性例を報告した.本症例では受傷の約1カ月半後に非受傷側に視神経炎を発症した.約2カ月半後の頭部MRIにて大脳白質に散在性病変が出現し,髄液蛋白の上昇をみとめた.その後,ステロイドパルス療法にて症状が軽快し,大脳白質病変は著明に減少した.外傷と多発性硬化症(MS)の発症や悪化との関連が以前より議論されている.本症例では外傷とMS様の大脳白質病変の出現との関連が考えられた.

(臨床神経, 44:108−110, 2004)
key words:頭部外傷, 眼球挫傷, 頭部MRI, 大脳白質散在性病変, 多発性硬化症

(受付日:2003年5月7日)