臨床神経学

症例報告

髄液interleukin-6の高値をみとめた心臓粘液腫による多発性小脳出血の1例

谷口 洋1), 村上 泰生1), 仙石 錬平1), 佐藤 浩則1), 井上 聖啓2)

1)東京慈恵会医科大学附属柏病院 神経内科〔〒277-8567 千葉県柏市柏下163番地-1〕
2)東京慈恵会医科大学附属病院 神経内科

症例は25歳男性である.脳梗塞を契機に心臓粘液腫を指摘された.粘液腫摘出の2年後,以前の小脳梗塞の部位に一致して脳出血が出現した.脳血管造影でテント下に異常血管はなかったが,両側中大脳動脈に紡錘状動脈瘤が多発していた.粘液腫はinterleukin-6(IL-6)を産生し,しばしば血清でIL-6が上昇する.本例ではIL-6が血清では正常だが,髄液で上昇していた.転移した粘液腫によるIL-6産生をうたがって脳生検を施行したが,粘液腫は確認できなかった.髄液でIL-6を測定した粘液腫の報告は過去にないが,頭蓋内病変を合併した例では髄液IL-6が良い指標になる可能性が示唆された.

(臨床神経, 44:677−681, 2004)
key words:心臓粘液腫, 転移, 脳出血, 脳動脈瘤, interleukin-6

(受付日:2004年2月19日)