臨床神経学

症例報告

Cu/Zn superoxide dismutase(SOD1)遺伝子変異(H43R)をともなった家族性筋萎縮性側索硬化症の臨床病理像

望月 葉子1)2), 水谷 智彦1), 中野 亮一3), 福島 隆男3), 本間 琢4), 根本 則道4), 武井 和夫5)

1)日本大学医学部内科学講座神経内科部門
2)東京都立北療育医療センター内科〔〒114-0033 東京都北区十条台1-2-3〕
3)新潟大学脳研究所臨床科学部門神経内科学分野
4)日本大学医学部病理
5)埼玉医科大学神経内科

Cu/Zn superoxide dismutase遺伝子エクソン2の43番目のヒスチジンがアルギニンに置換するミスセンス変異をともなう家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の剖検例を報告した.この変異は北米で1家系の報告があるのみで,詳細な臨床所見と病理像の報告はない.発端者は58歳時に下肢から発症した女性で,下位運動ニューロン(LMN)徴候を主体に急速に進行して発症約7カ月目に呼吸不全で死亡した.姉と従姉妹は60歳代発症で同様の経過をとり,姪2人は30歳代発症で早期に人工呼吸器が装着された.本家系のALSは,女性に多いLMN徴候主体の急速進行型で,発端者の病理像は後索型ALSに合致していた.

(臨床神経, 43:491−495, 2003)
key words:SOD1遺伝子, H43R, 家族性筋萎縮性側索硬化症, 後索型筋萎縮性側索硬化症, 急速進行型

(受付日:2003年3月25日)