臨床神経学

症例報告

中枢神経系に限局する脳血管炎の1剖検例―脳腫瘍を思わせるMRI所見と病理所見の対応―

森田 優子1), 篠原 伸顕1), 風張 昌司1), 高橋 若生1), 渋谷 誠2), 篠原 幸人1)

1)東海大学医学部内科学系神経内科〔〒259-1193 神奈川県伊勢原市望星台〕
2)東海大学医学部総合診療学系病理診断学部門

74歳無職の女性が突発性に2〜3時間持続する一過性の四肢脱力を示した.頭部MRI T2強調画像にて左頭頂葉に高信号をみとめ,ガドリニウム造影画像では脳溝に沿った造影効果がみられ,脳腫瘍のうたがいにて当科入院した.第2病日からは精神症状を主徴とするのみで明らかな局所症候を示さなかった.第17病日に意識障害が出現し,心肺停止となり死亡した.病理解剖にて中枢神経に限局する脳血管炎と診断した.病理所見上,血管炎は一部の中小の脳動脈およびその周囲の髄膜,脳実質の血管に限られていた.脳血管炎のMRI所見と病理所見の対応についてこれまで報告が少なく,自験例に文献的考察を加え報告した.

(臨床神経, 43:477−481, 2003)
key words:限局性脳血管炎, MRI, 病理解剖

(受付日:2003年1月22日)