臨床神経学

症例報告

2カ月におよぶ難治性けいれんを呈したが,良好に回復したEpstein-Barr virus脳炎の一例

西江 信1), 小川 雅也, 倉橋 幸造

青森県立中央病院 神経内科〔〒030-8553 青森市東造道2-1-1〕
1)現 弘前大学医学部附属脳神経血管病態研究施設分子病態部門

症例は37歳の女性である.2000年4月上旬より発熱,頭痛が持続し4月19日近医に入院した.第6病日よりせん妄,昏迷状態となり4月28日当科転院した.入院時,失見当識と項部硬直,四肢に固縮をみとめた.髄液細胞数117/mm3,蛋白80 mg/dl,Epstein-Barr virus(EBV)DNA陽性であった.第3病日よりてんかん重積状態となり,脳波では律動性徐波群発所見をみとめた.てんかん重積の治療として,全身静脈麻酔,呼吸管理を約2カ月間要した.血清EBV DNAは2週間で消失したが,髄液DNAは5カ月後まで陽性.髄液中EBV VCA-IgGはペア検体で,経過中4倍の上昇をみとめた.症状が寛解した18カ月後,髄液EBV DNAは陰性化していた.中枢神経系内で再活性化したEBVが,難治性てんかんを呈する脳炎の病因と考えられた.

(臨床神経, 43:422−426, 2003)
key words:Epstein-Barr virus, てんかん重積, ウイルス性脳炎, 髄液中EBV DNA, Polymerase chain reaction法, EBV再活性化

(受付日:2003年4月1日)