臨床神経学

原著

頭部MRIによる進行性核上性麻痺の脳幹萎縮の経時的検討―MRIはいつからパーキンソン病との鑑別に有用であるか?

山本 敏之, 大矢 寧, 小川 雅文, 尾方 克久, 川井 充

国立精神・神経センター武蔵病院神経内科〔〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1〕

進行性核上性麻痺(PSP)17例の頭部MRI T1強調画像水平断40撮影を罹病期間別に検討した.PSPは初回MRIよりも再検時MRIにおいて橋前後長,橋被蓋前後長,中脳前後長が低下した.パーキンソン病(PD)26例のMRI 26撮影との比較では,PSP群の橋被蓋前後長と中脳前後長は発症2年以降に,橋前後長は発症4年以降に有意に低値であった.また,PSP群は発症2年以降に,橋底部前後長と橋被蓋前後長の比が4より大きいか,もしくは,中脳レベルの左右大脳脚幅の和と中脳前後長の比が2より大きかった.PSPは発症2年まではMRIの変化が軽微であり,発症2年以降のMRIはPDとの鑑別に有用である.

(臨床神経, 43:392−397, 2003)
key words:進行性核上性麻痺, パーキンソン病, MRI, 中脳萎縮, 橋萎縮

(受付日:2003年3月19日)