臨床神経学

症例報告

頭部MRIで経過を観察した眼筋麻痺性片頭痛の1例

藤田 信也1), 奥泉 譲2), 他田 正義1), 永井 博子1)

1)長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2085 長岡市寺島町297-1〕
2)同 放射線科

症例は15歳の女子高校生である.左拍動性眼痛とともに複視が出現し,発症2日後に当科を受診した.内眼筋麻痺はなかったが,左眼瞼下垂と左眼球の内転,下方視制限をみとめた.9歳時から典型的片頭痛の発作をくりかえすようになり,13歳時に頭痛とともに複視を自覚したが自然軽快していた.母親にも片頭痛があった.血液に炎症反応はなく,CK,血糖,ACE,甲状腺機能は正常で,髄液にも異常所見をみとめず,眼筋麻痺性片頭痛と診断した.頭部MRI T1強調画像のガドリニウム造影で,左動眼神経が脚間槽の脳幹出口付近で優位に腫大し,造影効果をみとめた.2カ月後のMRIでは,左動眼神経の腫大と造影効果は軽減したものの残存していた.これらの所見は,機能性頭痛である片頭痛の疾患概念とは矛盾があり,眼筋麻痺性片頭痛の病態機序について考察した.

(臨床神経, 43:356−359, 2003)
key words:眼筋麻痺性片頭痛, 動眼神経麻痺, MRI

(受付日:2003年3月28日)