臨床神経学

症例報告

大脳基底核と側頭葉のMRI異常信号と中大脳動脈血管攣縮をみとめた糖尿病に関連したhemiballismの1例

内堀 歩1), 小林 康弘1), 千葉 厚郎1), 土屋 一洋2), 作田 学1)

1)杏林大神経内科〔〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2〕
2)同 放射線学科

症例は46歳女性.9年間糖尿病を無治療の後,右hemiballismが出現した.高血糖状態はインスリン投与開始により,血糖値で588mg/dlから100mg/dl台へ,HbA1cで初めの2カ月間で16.3%から8.8%へと急速に改善した.糖尿病治療開始直後より記銘力低下が出現.MRI画像上左大脳基底核に高血糖にともなうchorea,ballismで報告のあるT1強調像での高信号病変に加え,左側頭葉に経時的に血管透過性亢進→浮腫→層状壊死という一連の変化を示す異常所見をみとめ,これは低血糖性昏睡時にみられる画像変化と一部共通する特徴を有していた.またMRAで左中大脳動脈の血管攣縮をみとめた.側頭葉病変の発生には長期間の高血糖状態とその急速な補正の関与が考えられた.

(臨床神経, 43:330−334, 2003)
key words:糖尿病, chorea, ballism, 血管原性浮腫, 血管攣縮, 低血糖

(受付日:2002年11月25日)