臨床神経学

症例報告

頭後屈反射様運動と著明な球症状を呈したstiff-person症候群の1例

渥美 正彦, 千本 裕子, 西川 正悟, 峯田 春之, 中坂 義邦, 西本 和弘, 田中 尚, 北口 正孝

馬場記念病院脳神経内科〔〒592-8555 大阪府堺市浜寺船尾町東4-244〕

症例は57歳女性.四肢体幹の筋硬直と有痛性筋痙攣で発症.表面筋電図での安静時持続放電と抗GAD抗体の著明高値からstiff-person症候群(SPS)と診断した.筋硬直と有痛性筋痙攣にはdantroleneが奏効した.胸部CTにて胸腺腫の合併がみいだされた.胸腺腫摘出後に呼吸停止にいたる球症状と顔面への軽度の知覚刺激で誘発される頭後屈反射様の不随意運動を呈した.電気刺激にて誘発した頭後屈反射様運動の電位は当初二峰性であったが,症状の改善とともに一峰性へと変化した.頭後屈反射様運動はSPSにおける脳幹への障害の波及を反映すると考えられた.

(臨床神経, 43:322−326, 2003)
key words:stiff-person症候群, 胸腺腫, 頭後屈反射, 抗glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体, 呼吸困難

(受付日:2002年10月10日)