臨床神経学

症例報告

急性発症の疼痛をともなった上肢多発性単神経炎型ハンセン病ニューロパチーの1例

中山 聡子1), 上坂 義和1), 國本 雅也1), 三方 崇嗣2), 清水 潤2), 石井 則久3)

1)国立国際医療センター神経内科〔〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1〕
2)東京大学医学部神経内科
3)国立感染症研究所ハンセン病研究センター生体防御部

31歳ミャンマー人男性例を報告した.疼痛をともない週の経過で左上肢筋力低下と感覚障害が進行し受診した.左尺骨・正中・橈骨神経運動麻痺と,左手指および前腕全体と上腕内側の感覚低下がみられた.急性発症の多発単神経炎と考えられ,左浅橈骨神経より神経生検を施行し,病理所見よりハンセン病ニューロパチーと診断した.ハンセン病の神経病変は,皮神経や神経幹の障害が慢性多発性に進行しあたかもポリニューロパチーのような所見を呈するものと,血管炎性ニューロパチーのように明瞭な多発単神経炎のタイプで急性発症するものがある.血管炎性ニューロパチー様の発症様式をとる末梢神経障害の鑑別の一つとしてハンセン病ニューロパチーを再認識する必要がある.

(臨床神経, 43:265−269, 2003)
key words:ハンセン病, ハンセン病ニューロパチー, 多発単神経炎, 浅橈骨神経生検

(受付日:2002年12月12日)