臨床神経学

症例報告

筋痛と著明な筋腫脹をみせた慢性GVHDとしての筋炎症例の骨格筋MRIと筋病理所見

加納 聡子1), 清水 潤1), 三方 崇嗣1), 篠江 隆1), 大田 秀隆2), 米野 由希子2), 小川 誠司2), 平井 久丸2), 金澤 一郎1)

1)東京大学神経内科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕
2)同 血液腫瘍内科

慢性移植片対宿主病(graft-versus-host disease,以下GVHD)としての筋炎症例を報告した.症例は激しい運動をきっかけとして発症し,進行性に全身の筋痛と関節の可動制限をおこすほどの著明な筋腫脹をみとめた.骨格筋MRIでは筋内に斑状の高信号の散在をみとめ,筋病理像では筋線維の壊死および再生像の多発と共に間質の炎症細胞浸潤と浮腫をみとめた.ステロイド投与により症状はすみやかに軽快した.間質の高度の炎症細胞浸潤が本例のMRI像および特徴的な臨床像に反映されたと考えた.過去の慢性GVHD筋炎例と比較し,激しい運動がきっかけとなった点,間質の炎症と浮腫が高度であった点が本例の特徴と考えた.

(臨床神経, 43:93−97, 2003)
key words:慢性GVHD, 筋炎, 骨格筋MRI, 筋病理, 筋腫脹

(受付日:2002年3月15日)