臨床神経学

症例報告

蘇生後の無酸素性脳症により脳幹および脊髄灰白質に対称性壊死を呈した2成人例

山下 真理子, 山本 徹

大阪府済生会中津病院神経内科〔〒530-0012 大阪市北区芝田2-10-39〕

症例は75歳男性と82歳女性である.いずれも呼吸・心停止の約20分後に蘇生され,人工呼吸器を装着.高度の遷延性意識障害から回復することなく数週間で死亡した.病理所見では,2例とも大脳皮質の層状壊死,小脳や視床,基底核の虚血性病変とともに,中脳上・下丘,中脳水道周囲灰白質,黒質,橋および延髄被蓋部の脳神経核に対称性壊死をみとめ,後者では脊髄後角にも部分的壊死をみとめた.新生児や乳児のばあいと異なり,成人の蘇生後無酸素性脳症では脳幹の広範な壊死はまれとされている.しかし,蘇生医療の進歩した現在,成人でも脳灌流障害が高度なばあい,脳幹・脊髄の灰白質に対称性壊死を呈する例は予想以上に多いと推測される.

(臨床神経, 43:113−118, 2003)
key words:成人例, 無酸素性脳症, 脳幹, 壊死, 神経病理

(受付日:2003年1月14日)