臨床神経学

短報

MRI拡散強調画像にてくも膜下腔・脳室内に異常高信号を呈した化膿性髄膜炎の1剖検例

小栗 卓也1), 三竹 重久1), 湯浅 浩之1), 豊田 剛成1), 上松 則彦1), 三浦 敏靖1), 吉田 眞里2), 橋詰 良夫2), 高田 幸児3), 小鹿 幸生3)

1)公立陶生病院神経内科〔〒489-8642 愛知県瀬戸市西追分町160〕
2)愛知医科大学加齢医科学研究所〔〒480-1195 愛知県愛知郡長久手町大字岩作字雁又21〕
3)名古屋市立大学大学院医学研究科神経病態学講座(神経内科)〔〒467-8601 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1〕

症例は79歳女性である.大腸癌の精査中に発熱をともなう急激な意識障害をきたした.頭部MRI拡散強調画像(MRI-DWI)にて,くも膜下腔および脳室内に異常高信号をみとめた.患者はMRI撮像当日に死亡.病理解剖による肉眼所見で脳底部を中心に多量の滲出液の貯留を,組織学的にくも膜下腔への著明な炎症細胞浸潤をみとめ,化膿性髄膜炎と診断された.脳実質内への炎症の波及はみとめなかった.MRI-DWIにおけるくも膜下腔・脳室など実質外の異常高信号は,化膿性髄膜炎における滲出液の可能性があり,鑑別診断に有用と考えられた.

(臨床神経, 43:35−37, 2003)
key words:化膿性髄膜炎, MRI, 拡散強調画像(DWI), 剖検, 神経病理

(受付日:2002年9月4日)