臨床神経学

症例報告

嗄声と嚥下困難にて発症したRamsay Hunt症候群の1例―合併脳神経障害とその伝播機序についての考察―

宮崎 雄生*1), 田島 康敬, 須藤 和昌, 松本 昭久, 菊地 誠志**, 田代 邦雄**

市立札幌病院神経内科〔〒060-8604 札幌市中央区北11条西13丁目〕
**北海道大学大学院医学研究科脳科学専攻神経内科学〔〒060-8638 札幌市北区北15条西7丁目〕
1)現 北海道大学大学院医学研究科脳科学専攻神経内科学〔〒060-8638 札幌市北区北15条西7丁目〕

症例は85歳女性である.右第IX,X脳神経障害出現の後,右耳帯状疱疹,右第VII,VIII脳神経障害が出現しRamsay Hunt症候群を呈した.血清,髄液において有意な水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus,以下VZV)抗体価の上昇をみとめ,さらにVZV DNAが髄液中より検出された.多発脳神経障害をともなったRamsay Hunt症候群の本邦文献報告例の検討から第IX,X脳神経の合併が多く,また約半数では他の脳神経障害が第VII脳神経障害に先行していることが判明した.さらに脳神経障害の伝播機序,早期診断の問題点につき文献的考察を加えた.

(臨床神経, 42:855−858, 2002)
key words:Ramsay Hunt症候群, 水痘帯状疱疹ウイルス, polymerase chain reaction(PCR), 脳神経障害

(受付日:2002年8月19日)