臨床神経学

症例報告

眼窩尖端症候群にて発症し,内頸動脈海綿静脈洞部の真菌性動脈瘤と脳梗塞を合併した中枢神経系アスペルギルス症の1例

植木 美乃1), 数田 俊成1), 内藤 理恵3), 林 雅晴4), 田中 こずえ5), 水谷 俊雄2), 平井 俊策1)

1)東京都立神経病院神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕
2)同 検査科
3)同 神経耳科
4)東京都立神経研究所臨床病理学〔〒183-8526 東京都府中市武蔵台2-6〕
5)国立療養所村山病院神経内科〔〒208-0011 武蔵村山市学園2-37-1〕

眼窩尖端症候群を初発症状とし,内頸動脈の真菌性動脈瘤と脳梗塞を合併した中枢神経系アスペルギルス症の79歳健常女性例を報告した.頭部MRIでは左眼窩尖端部から海綿静脈洞前部に造影効果をみとめた.剖検所見で左蝶形骨洞,左海綿静脈洞,左内頸動脈瘤壁内にアスペルギルスの浸潤をみとめたため,本例では頭蓋底前方の真菌感染が海綿静脈洞から内頸動脈に波及し真菌性動脈瘤を引きおこしたと考えられた.眼窩尖端症候群を初発症状とする頭蓋底アスペルギルス感染症はまれであるとともに,本例のように真菌性動脈瘤と脳梗塞を合併した例は過去に報告されていない.中枢神経系アスペルギルス症では脳血管障害の合併を常に念頭におく必要がある.

(臨床神経, 42:761−765, 2002)
key words:眼窩尖端症候群, 中枢神経系アスペルギルス症, 真菌性動脈瘤, 脳梗塞

(受付日:2002年6月10日)