臨床神経学

症例報告

Pergolide誘発性の胸水貯留をみとめた若年性パーキンソニズム

桑原 武夫

新潟県立新発田病院神経内科〔〒957-8588 新潟県新発田市大手町4丁目5番48号〕

パーキンソン病治療にもちいられる麦角アルカロイド誘導体のドパミン作動薬であるpergolideの投与中に,胸水の出現と肺の間質性変化がみられた59歳の若年性パーキンソニズムの男性症例を報告した.Pergolideの投与は1990年より開始され,最高で2,250μg/日を服用し,過去7年間は1,000μg/日を服用していた.胸水貯留は慢性の経過で生じたと考えられた.Pergolideを中止した後,肺病変は軽快傾向がみとめられた.胸膜・肺異常はbromocriptineのような他の麦角アルカロイド誘導体であるドパミン作動薬の副作用として報告されている.Pergolideによる胸膜・肺病変の発症の報告も海外においてもまれではあるが散見される.しかしながら,国内における論文報告は著者らが渉猟しえたかぎりでは見当たらず,本邦ではじめての報告である.Pergolideはパーキンソン病の治療において高頻度にもちいる薬剤であり,今後のパーキンソン病治療上配慮すべき点と考えた.

(臨床神経, 42:757−760, 2002)
key words:胸水, 胸膜肺疾患, ペルゴリド, ドパミンアゴニスト, 麦角アルカロイド

(受付日:2002年6月10日)