臨床神経学

原著

急性期脳梗塞の臨床像およびその医療の地域差に関する多施設共同研究

数井 誠司1)*, 木村 和美1), 峰松 一夫1), 山口 武典1), 脳梗塞急性期医療の実態に関する研究グループ(J-MUSIC)

1)国立循環器病センター〔〒565-8565 吹田市藤白台5-7-1〕
現 白百合診療所
脳梗塞急性期医療の実態に関する研究グループ(J-MUSIC)

平成10年度から3年間にわたっておこなわれた「脳梗塞急性期医療の実態に関する研究」データに基づいて,ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症の主要3病型14,864例を対象とし,臨床項目に関して全国7地域(北海道,東北,関東,中部,近畿,中・四国,九州)ごとに比較検討した.関東,近畿,中・四国ではアテローム血栓性の方がラクナより多かった.この3地域では糖尿病と高脂血症の頻度が高く,そのことがアテローム血栓性脳梗塞の多い原因である可能性が考えられた.急性期治療は地域によってかなりことなっており,病型や基礎疾患による薬剤の選択,標準的な治療薬剤について全国レベルでのコンセンサスをえる必要があると考えられる.受診状況,担当科,入院病棟,在院日数なども地域差が大きく,社会的啓発,院内検査や病棟運営の円滑化,Stroke Care UnitやStroke Unitの普及,チーム医療の拡大,などの努力が,全国レベルおよび地域レベルで必要である.

(臨床神経, 42:736−744, 2002)
key words:急性期脳梗塞, 地域差, 臨床病型, ブレイン・アタック, SCU(stroke care unit)

(受付日:2002年8月21日)