臨床神経学

短報

成人発症Still病に抗リン脂質抗体症候群を合併し,spectacular shrinking deficitを呈した急性脳虚血の1例

陣内 重郎, 大星 博明, 中村 義人, 久留島 秀朗, 井林 雪郎, 藤島 正敏

九州大学大学院医学研究院病態機能内科(第二内科)〔〒812-0054 福岡県福岡市東区馬出3-1-1〕

症例は63歳の男性である.持続する弛張熱と多発関節痛をみとめ,成人発症Still病と診断した.ステロイド治療をおこなったが,治療開始日に突然,意識障害,右上肢麻痺,失語が出現した.頭部CT,MRIで明らかな病変をみとめなかったものの,MR spectroscopyで左中大脳動脈分枝領域に乳酸値の上昇をみとめた.神経症状は数時間以内に著明に改善し,spectacular shrinking deficitの臨床像を呈した.また,抗リン脂質抗体症候群の合併が明らかとなり,今回の脳虚血発作に関与が示唆された.短時間持続の脳虚血をMRSで描出しえた貴重な症例と考えられる.

(臨床神経, 42:629−631, 2002)
key words:成人発症Still病, 抗リン脂質抗体症候群, spectacular shrinking deficit, MR spectroscopy, 乳酸

(受付日:2001年12月14日)