臨床神経学

症例報告

MRIで病変の変化を経時的に観察できた中大脳動脈解離の1例

渡邉 聖樹1), 稲富 雄一郎1), 米原 敏郎1), 藤岡 正導1), 内野 誠2)

1)済生会熊本病院脳卒中センター〔〒861-4193 熊本県熊本市近見5-3-1〕
2)熊本大学医学部神経内科

症例は30歳の男性である.左片麻痺のTIAをくりかえし当科に入院した.脳血管造影検査では,右中大脳動脈水平部(M1部)に狭窄性変化をみとめた.造影MRIではM1部に沿って解離腔と考えられる造影される病変をみとめた.またT2強調画像ではflow void周囲に半月状の陰影をみとめ,脳動脈解離と診断した.アスピリン投与開始以後はTIAは消失し,造影MRIおよびMRAにて解離腔の消退と真腔の血流改善を経時的に観察することができた.造影MRIやMRAは,中大脳動脈解離の診断や経過観察に有用である.

(臨床神経, 42:608−612, 2002)
key words:脳動脈解離, 中大脳動脈, 一過性脳虚血発作, MRI, MRA

(受付日:2002年3月20日)