臨床神経学

短報

両側横隔神経麻痺を呈し糖尿病を合併したCharcot-Marie-Tooth病1型の1例

高倉 由佳, 古谷 博和, 山下 謙一郎, 村井 弘之, 荒木 武尚, 菊池 仁志, 大八木 保政, 山田 猛, 吉良 潤一

九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

44歳女性例を報告した.幼少時期より四肢遠位筋の筋力低下,筋萎縮,感覚低下が慢性に進行し,40歳時より独歩困難となった.この頃より糖尿病を指摘されるとともに,仰臥位での呼吸困難感を自覚するようになった.四肢遠位部に中等度から高度の筋力低下と中等度の筋萎縮をみとめ,手袋靴下型に中等度の全感覚低下があった.四肢腱反射は消失,病的反射なし.腓腹神経生検にて高度の有髄線維の脱落と著明なonion bulbの形成をみとめ,母親に同様の症状ありCharcot-Marie-Tooth病(CMT)1型と診断した.肺機能検査は坐位で正常,仰臥位で高度の拘束性障害をみとめた.胸写上両側横隔膜の挙上があり,横隔神経麻痺(PNP)の合併と判断した.終夜睡眠ポリグラム(PSG)でREM期に一致して,酸素飽和度の低下がみとめられた.CMTでは横隔神経の脱髄によりPNPをきたすことがあり,定期的な呼吸機能検査が必要と考えられた.

(臨床神経, 42:320−322, 2002)
key words:Charcot-Marie-Tooth disease type 1, 横隔神経麻痺, 拘束性呼吸機能障害, 糖尿病, 終夜睡眠ポリグラム(PSG)

(受付日:2001年3月15日)