臨床神経学

症例報告

網膜電図に異常を呈したCreutzfeldt-Jakob病と考えられる1例

尾関 俊彦1), 野倉 一也1), 古閑 寛1), 山本 紘子1), 島田 佳明2), 堀口 正之2)

1)藤田保健衛生大学神経内科〔〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98〕
2)同 眼科

症例は72歳の女性である.2000年10月頃から視力低下がみとめられたが,原因は不明であった.さらに歩行時のふらつき,ろれつ困難,記銘力の低下が出現し,約10カ月の経過で寝たきり状態となった.頭部MRI拡散強調像で,大脳皮質,とくに頭頂葉に明らかな高信号病変をみとめ,ひき続いて全身のミオクローヌスと,脳波上,周期性同期性放電が出現した.プリオン遺伝子に異常がないことから,弧発性Creutzfeldt-Jakob病が強くうたがわれた.網膜電図では,b波の消失とそれにひき続くa波の消失をみとめ,網膜内層(MÜller細胞,双極細胞)から外層(視細胞)へと進行する網膜障害の可能性が示唆された.

(臨床神経, 42:304−307, 2002)
key words:Creutzfeldt-Jakob病, 網膜電図(electroretinogram), 視力障害

(受付日:2002年4月10日)