臨床神経学

短報

コンピューターX線装置による咽頭二重造影法で異常を示す慢性期脳血管障害患者とACE阻害薬の肺炎予防効果

澁谷 誠二, 村橋 真, 井上 昌彦, 自見 隆弘, 若山 吉弘

昭和大学藤が丘病院神経内科〔〒227-8501 横浜市青葉区藤が丘1-30〕

慢性期脳血管障害患者143例にコンピューターX線装置による咽頭二重造影を施行し,検査後3年以内の肺炎発生率とACE阻害薬肺炎予防効果をしらべた.肺炎は高齢で多発性脳病巣をもつ患者に多く発生し,また異常咽頭二重造影所見患者で85例中26例と非常に高い肺炎発生率を示した(p<0.001).一方,異常咽頭二重造影所見をみとめたACE阻害薬服用患者は同降圧薬非服用患者よりも肺炎発生率が低かった(p<0.05).このことから,ACE阻害薬は慢性期脳血管障害患者に高頻度でともなう軽微な嚥下機能障害の悪化・進展を抑制し,嚥下性肺炎予防効果をもつと考えられた.

(臨床神経, 42:240−242, 2002)
key words:コンピューターX線撮影, 咽頭二重造影, 慢性期脳血管障害, 嚥下性肺炎, ACE阻害薬

(受付日:2002年2月7日)