臨床神経学

症例報告

多発神経炎,右動眼神経麻痺で発症し無症候の左中大脳動脈の狭窄をともなった原発性シェーグレン症候群の1例

柳原 千枝, 中治 佳代子, 西村 洋

西神戸医療センター神経内科〔〒651-2273 神戸市西区糀台5-7-1〕

動眼神経麻痺と多発神経炎で発症し中大脳動脈狭窄を合併した原発性シェーグレン症候群(SjS)の1例を経験した.症例は39歳女性,四肢しびれと脱力で発症し約2カ月後に右動眼神経麻痺が出現した.頭部MRAと経頭蓋ドップラーで左中大脳動脈の狭窄をみとめた.腓腹神経生検で軸索変性と血管炎を示唆する所見をえた.口渇症状があり唾液腺生検と唾液腺シンチにてSjSに特徴的な所見をえた.SjSに血管炎を合併することは知られているが,脳主要血管病変の報告例は少ない.本例では末梢神経障害に動眼神経麻痺,中大脳動脈の狭窄を合併しており種々のサイズの血管の障害が示唆された.原発性SjSでは臨床症状がなくても脳血管障害が存在する可能性がある.

(臨床神経, 42:216−220, 2002)
key words:原発性シェーグレン症候群, 多発神経炎, 動眼神経麻痺, 中大脳動脈狭窄

(受付日:2001年12月17日)