臨床神経学

短報

発症早期よりacquired stutteringをみとめた進行性核上性麻痺の1例

坂井 健二1), 古井 英介1), 駒井 清暢1), 能登谷 晶子2), 山田 正仁1)

1)金沢大学大学院医学系研究科脳医科学専攻脳病態医学講座脳老化・神経病態学(神経内科学)〔〒920-8640 石川県金沢市宝町13-1〕
2)金沢大学医学部保健学科作業療法学専攻

症例は生来吃音歴のない57歳男性.49歳時よりacquired stuttering(吃音様発話,AS)が出現.顕著なAS,垂直性核上性眼球運動障害,体幹の筋固縮,姿勢反射障害,運動保続,カタレプシーをみとめたが,失語はなかった.画像所見をふくめ進行性核上性麻痺(PSP)と診断.ASは変性疾患等で二次的に出現する吃音類似の発話障害で,発話における間代性保続と位置づけられる.間代性保続の責任病巣は中脳から辺縁・前頭皮質ドーパミン系が推定されており,PSPではこの系は障害されるため,ASとの関連が考えられた.PSPでは発症早期よりASをみとめることがあり,早期診断に重要な症候と思われる.

(臨床神経, 42:178−180, 2002)
key words:吃音様発話, 進行性核上性麻痺, 保続, カタレプシー

(受付日:2002年1月4日)