臨床神経学

症例報告

全身性無汗症によるうつ熱を主徴としたSjögren症候群の1例

中里 良彦, 田村 直俊, 山元 敏正, 阿部 達哉, 島津 邦男

埼玉医科大学神経内科〔〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38〕

症例は60歳,男性.生来健康であったが,2000年5月より高温環境下で容易にうつ熱となり,身体を冷やすことで容易に回復するようになった.うつ熱の原因として無汗症がうたがわれ当科に入院した.無汗以外に神経学的異常なし.温熱発汗試験で前額部,手掌・手背を除き全身性無汗.薬物発汗試験ではpilocarpine,acetylcholineで発汗をみとめなかった.無汗部の皮膚生検で汗腺・導管に異常なし.免疫血清学的検査でIgG,RF高値,抗核抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体が陽性,涙液分泌低下,唾液腺に特徴的な組織学的異常をみとめ,Sjögren症候群と診断した.本症例はSjögren症候群による汗腺のコリン系受容体に対する抗原抗体反応で生じた全身性無汗症と考えた.

(臨床神経, 42:171−174, 2002)
key words:Sjögren症候群, 無汗症, 後天性全身性無汗症, 自律神経障害

(受付日:2002年2月15日)