臨床神経学

症例報告

頭部外傷後遅発性髄液漏による再発性細菌性髄膜炎の1例

松田 希1), 松浦 豊1), 星 明彦1), 山野井 貴彦1), 遠藤 一博1), 本間 真理1), 山本 悌司1), 佐藤 園美2), 児玉 南海雄2)

1)福島県立医科大学医学部神経内科学講座〔〒960-1295 福島県福島市光ヶ丘1番地〕
2)福島県立医科大学医学部脳神経外科学講座

左前頭部外傷の約4年後および7年後に,ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)による遅発性再発性細菌性髄膜炎に罹患した42歳の男性の1例を報告する.111In-DTPA脳槽シンチグラフィーで23時間後に左前頭部にradioactive accumulationをみとめ,頭部ヘリカルCT MPR像で左前頭洞骨内板骨折が確認された.臨床的にあきらかな髄液鼻漏はみとめなかったが,左前頭洞内板骨折と関連した外傷性髄液漏が推定された.再発性髄膜炎の原因は髄液漏と結論し,外科的に髄液漏修復術を施行した.外傷性髄液漏の経過として,再発性,遅発性の細菌性髄膜炎の罹患は決してまれではなく,臨床上留意すべきと考えた.

(臨床神経, 42:158−161, 2002)
key words:再発性細菌性髄膜炎, 外傷性髄液漏, ペニシリン耐性肺炎球菌

(受付日:2001年11月20日)