臨床神経学

原著

多系統萎縮症における大脳萎縮経過のMRIによる定量的検討

小長谷 正明1), 松岡 幸彦1)*, 小長谷 陽子2)

1)国療鈴鹿病院神経内科〔〒513-8501 鈴鹿市加佐登3-2-1〕
2)JR東海総合病院神経内科
現国立療養所東名古屋病院

多系統萎縮症(MSA)28例(SND群14例,OPCA群14例;106撮影)と正常対照85例のMRIにて,橋,被殻,大脳,前頭葉,側頭葉,頭頂・後頭葉を計測し,萎縮の進行を検討した.病初期にはOPCAでは橋の,SNDでは被殻の萎縮が,それぞれ有意に他病型に比して強かったが,経過とともに両病型間の差はなくなった.17例で大脳や前頭葉の萎縮が進行性にみとめられた.初期にはこれらの萎縮はSNDに多い傾向がみられた.長期間経過後急速に萎縮が出現する例や,早期から萎縮が強い例がみられた.側頭葉,頭頂・後頭葉萎縮は頻度や程度は前頭葉より小さかった.MSA長期経過例では前頭葉優位な大脳萎縮を呈することが明らかになった.

(臨床神経, 42:118−125, 2002)
key words:多系統萎縮症, MRI, 大脳萎縮, 前頭葉萎縮

(受付日:2001年6月16日)