臨床神経学

短報

広範な脳動脈解離をみとめた若年性脳梗塞の1例

栗原 彩子1), 中安 弘幸1)2), 青山 泰明1)3), 瀧川 みき4)5), 大浜 栄作4), 中島 健二1)

1)鳥取大学医学部脳神経内科〔〒689-8503 米子市西町31〕
2)現 鳥取県立中央病院神経内科〔〒680-0901 鳥取市江津730〕
3)現 鳥取県済生会境港総合病院神経内科〔〒684-8555 境港市米川町44〕
4)鳥取大学医学部脳神経病理〔〒689-8503 米子市西町31〕
5)現 医療法人十字会野島病院神経内科〔〒682-0863 倉吉市瀬崎町2714-1〕

症例は20歳男性で,突然の意識障害を主訴に当院救急外来を受診した.頭部CT上,椎骨脳底動脈領域に一致して低吸収域を呈し,頭部3DCTにて脳底動脈起始部にtapering occlusionをみとめ,脳底動脈解離による脳梗塞と診断した.病理解剖にて,脳底動脈起始部に起因し,左右の分枝をふくめ後大脳動脈まで連続する内膜下解離をみとめ,脳主要血管外径の減少,中膜の菲薄化および内膜の肥厚を呈した.広範な脳動脈解離による脳梗塞の報告は少なく,明らかな危険因子をみとめない脳動脈解離の発症機序を考える上で貴重な症例と考えた.

(臨床神経, 42:970−973, 2002)
key words:脳梗塞, 若年性, 脳底動脈, 動脈解離

(受付日:2002年9月9日)