臨床神経学

短報

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によりSIADH,拍動性頭痛が惹起された筋萎縮性側索硬化症の1例

中里 良彦, 武井 和夫, 山里 将瑞, 田村 直俊, 島津 邦男

埼玉医科大学神経内科〔〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38〕

57歳の男性.筋萎縮性側索硬化症(ALS)で外来通院中であったが,告知を受けてからうつ状態となり入院した.fluvoxamine maleate(選択的セロトニン再取り込み阻害剤:SSRI)50mg/日を投与したところ,3日目より右側頭部に強い拍動性頭痛が出現した.入院後血清Na値は131mEq/lから112mEq/lへと低Na血症が急速に進行した.5日目に服用中止したところ頭痛はすみやかに消失,血清Na値も129mEq/lへ改善した.ALSでは抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)を生じる.SSRIもSIADHを惹起することがあり,本症例ではSSRIによりSIADHが顕性化したと考えた.頭痛も服薬中止後ただちに消失したことからSSRIが原因と考えた.

(臨床神経, 42:48−50, 2002)
key words:選択的セロトニン取り込み阻害剤, 抗利尿ホルモン分泌異常症候群, 筋萎縮性側索硬化症, 片頭痛

(受付日:2002年1月4日)