臨床神経学

短報

一過性の左半身舞踏運動で発症したもやもや病の一成人例

三浦 孝顕1), 小林 道子1), 園生 雅弘1), 石井 賢二2), 清水 輝夫1)

1)帝京大学医学部神経内科〔〒173-8605 東京都板橋区加賀2-11-1〕
2)東京都老人総合研究所ポジトロン医学研究部門〔〒173-0015 東京都板橋区栄町35-2〕

症例は54歳女性.約3カ月の経過で左顔面・上下肢の舞踏運動を来し,脳血管撮影などよりもやもや病と診断された.舞踏運動はhaloperidol 0.75mg/日内服開始後数日で改善した.PET(positron emission tomography)にて両側の側頭葉・頭頂葉の脳血流低下をみとめ,とくに右側頭葉からシルビウス裂周辺皮質,頭頂葉にかけての血流は梗塞閾値近くまで低下し,線条体における酸素摂取率は有意に上昇していたことから,基底核の虚血によって舞踏運動が生じた可能性が考えられた.舞踏運動をともなったもやもや病の過去の報告は若年者がほとんどであり,本症例は最高齢の報告である.

(臨床神経, 42:45−47, 2002)
key words:舞踏運動, もやもや病, PET(positron emission tomography)

(受付日:2001年10月11日)