臨床神経学

短報

進行性核上性麻痺(PSP)に対するTandospirone citrate(5-HT1A agonist)の効果

藤野 泰祐, 中島 雅士, 坪井 義夫, 馬場 康彦, 山田 達夫

福岡大学医学部内科学第五教室〔〒814-0133 福岡市城南区七隈7-45-1〕

進行性核上性麻痺(PSP)に対するTandospirone citrate(5-hydroxytryptamine1A agonist,以下TC,5-HT1A agonist)の臨床効果を検討した.The National Institute of Neurological Disorders and Stroke and the Society for PSP,Inc.(以下NINDS-SPSP)の診断基準を満たすPSP 8症例(男6,女2)を対象とし,開眼失行,眼球運動障害,頸部筋強剛,動作緩慢,姿勢反射障害,歩行障害,構音障害,嚥下障害,排尿障害の9項目について,TC投与前と30mg連日投与後2週目および4週目の重症度を比較した.症例1から5については投与後6カ月目の重症度も評価した.2症例では副作用発現のため2週目で投与を中止した.投与後,8例中7例で何らかの症候の改善がみられた.歩行,姿勢反射障害,動作緩慢,頸部筋強剛の各項目は5症例以上で改善し,このうち歩行を除く3項目では統計学的にも有意な改善をみとめた.TCはPSPの錐体外路症状に対して有効,他の症状に対しては無効であった.この効果の解離はPSPの錐体外路症状に対する5-HT作働系の関与を示唆している.

(臨床神経, 42:42−44, 2002)
key words:進行性核上性麻痺, Tandospirone citrate, 5-HT, 錐体外路症状

(受付日:2001年10月9日)