臨床神経学

短報

早期診断が困難であったCampylobacter fetus subsp. fetusによる脊椎椎間板炎,髄膜脳炎の1例

尾関 俊彦, 野倉 一也, 古閑 寛, 山本 ひろ子

藤田保健衛生大学神経内科〔〒470-1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98〕

症例はアルコール多飲歴のある49歳の男性で,意識障害,炎症所見と共に,髄液に単核球優位の細胞増加があり,無菌性髄膜脳炎をうたがわれた.菌の同定に苦慮したが,血液,髄液からCampylobacter fetus subsp. fetusが培養された.腰椎MRIで,L4,L5椎体のT1低信号とL4-L5椎間のT2高信号をみとめ,同菌による脊椎椎間板炎と考え,髄膜脳炎を併発したと診断した.同菌による髄膜脳炎では髄液検査上,単核球が優位に増加する傾向があり,抗生剤による治療が可能であるという点で,特別な注意が必要と考えられた.

(臨床神経, 42:38−41, 2002)
key words:髄膜脳炎, 脊椎椎間板炎, Campylobacter fetus subsp. fetus

(受付日:2001年9月5日)