臨床神経学

短報

ガンマーグロブリン療法が有効であった,糖尿病を合併する慢性炎症性脱髄性多発神経炎の1例

中野 美佐1), 高瀬 靖1), 巽 千賀夫1), 三浦 温子2), 松山 辰男2), 嘉手川 淳3), 芳川 浩男4)

1)市立豊中病院神経内科〔〒560-8565 大阪府豊中市柴原町4-14-1〕
2)同 内科
3)同 リハビリテーション科
4)大阪大学医学部神経機能医学

64歳男性.10年前より両足のしびれ感出現,7年前に糖尿病を指摘され,食事療法と内服治療で血糖は正常化した.しかし両下腿以下のしびれ感が出現し,3年前より両下肢脱力も生じた.前脛骨筋は萎縮し,下肢遠位筋の脱力,四肢腱反射低下,髄液蛋白上昇をみとめた.神経伝導速度検査はCIDPの診断基準を満たした.神経生検では有髄神経線維の脱落,玉ねぎ形成,神経内膜の血管基底膜の肥厚をみとめた.解きほぐし法では脱髄が優位で,糖尿病を合併するCIDPと診断.しびれと脱力はガンマーグロブリン療法後改善した.糖尿病性末梢神経障害からDM-CIDPを識別することは治療法がことなるため重要である.

(臨床神経, 42:32−34, 2002)
key words:慢性炎症性脱髄性多発神経炎, 糖尿病, ガンマーグロブリン療法

(受付日:2000年12月28日)